31回を数える西日本選手権、そして22回を数える国際親善の広島県知事杯が今年も広島で行われた。広島出身の私は年に一回の凱旋試合という事で、毎年4月の1週目にはこの大会に出場してきたが、今年は選手とは違った立場でこの試合をレポートしてみたい。
まず特筆すべきは、一支局が開催する試合としては日本全国見渡してもこれ以上の試合はないだろうということ。審査員の豪華なメンバーもさることながら、日本のトップ選手達、アジアの精鋭、そしてワールドクラスの選手達が皆、自費で参加しているのである。これだけの審査員、選手が集まる大会は国内では中々お目にかかれないのではないだろうか。
昨年から会場をサンプラザから、オフィシャルホテルであるリーガロイヤルホテルに移した事で、フロアはコンパクトでありながらも観客との距離感は近くなり、選手達の熱が直接伝わってくるような臨場感が感じられる。シード選手の出てくる二次予選からフロアの空気がインターナショナルコンペに変貌する。決してフルパワーではないが、ハイクオリティなベーシックテクニックを伴った踊りは、観客の目を楽しませるのには充分であろう。ラウンドが上がるにつれて、躍動感を感じさせるボディ、スムーズで力強いレッグアクション、エキサイトしている表情が踊り手の中から感じ取れるようになってくる。この距離感で観ていると、踊り手の心の内面まで見えてくるからまた面白い。
美味しいディナーを頂いた後には、中国人選手達によるフォーメーションやショーが繰り広げられる。何故日本人のショーではないのかという疑問は置いておき、この辺りの協力関係も長年、国際社会、特にアジアにおける友好な関係を築いてきた桜本氏の手腕に依るところが大きいのではないだろうか。プロ部門の決勝はボールルーム部門とラテンアメリカン部門が交互に踊られ、選手も余力を残すことなく、ベストダンスを踊っていたように思う。
日本人選手が世界の檜舞台で活躍する為には、やはりこのような国際コンペが国内で開催され、ホームで海外の強豪を迎え撃てるような環境を作っていくことが重要であろう。海外コンペでも影響力のある審査員を招き、しっかりと日本人選手の存在感をアピールする事。組織としてこのような国際渉外を行なっていかなければ、近年のアジア近隣諸国の隆盛を考えれば、手遅れになるのは想像に難しくない。一支局が、そして一人の人間がこのような国際コンペを22年間も継続してきた事は、筆舌に尽くしがたい努力と献身があった事であろう。幾多の困難を乗り越え、現在まで至る道のりには敬意を表するばかりである。
業界を発展させる大きな有効な手段の一つとして、スターを作る事が挙げられる。スターが出てくれば、フィギュアスケートの羽生君にしろ、将棋の藤井君にしろ、その業界を取り巻く環境は一変する。もちろん本人の才能、努力が前提の話なのだが、いい素材がいても、それをバックアップする組織が環境を整えてあげなければ、チャンスは回って来ないだろう。ましてや、他国がそれをしているのなら尚のことだ。我々もFor Japan という気概を持って、頑張っている選手を世界に送り出す努力を続けなければならないと、このコンペを改めて客観視する事で痛感させられた。
文責 金光進陪
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