一期一会「ワールドトラベラー」

 年を追う毎に暑くなるのではないかと思わせるこの酷暑の中、このままでは人は地球では生きていけないのではないかと心配になる。特に今年の夏は、日本のみならず世界中が猛暑に見舞われ、日本列島は猛暑と台風、大雨のサンドイッチといったような有様である。

 世界には様々な気候があり、季節がある。増刷して発行してもらったパスポートの残り少なくなってきた余白を確認しながら、その国の気候や季節を振り返ってみたい。


 5月のドイツは最高である。何度訪れても、日の沈まない夜9時に屋台で買ったソーセージとヴァイスビアを飲む度に、生きてて良かったと感じる。適度に乾いた風が吹き抜け、朝晩は上着がないと肌寒いが、酔っ払って石畳の上で寝転んでも死にはしない。


 春のロンドンも素敵なところがある。日本の桜が散った頃にロンドンに渡ると、ちょうど桜が咲き始めるのである。ロンドンの桜は日本のそれとは違い、かなり自己主張が強く、濃いピンクの花をこれでもかと咲き誇らせている。日本とロンドンと、2回も桜を見ることが出来た、幸せな想い出の一つだ。


 イタリアは冬がいい。きらびやかなクリスマスイルミネーションの中を、ファーのコートに身を包んだファッショニスタ達が行き交う。まるで映画のワンシーンを観ているみたいだ。日本ではお目にかかれないようなブランドが、セールで驚くほど安く買うことが出来る。真冬でも、レストランのテラス席にはストーブが置かれ、タバコと赤ワインとおしゃべりに興じている。


 バリ島へも10年以上通っているが、いつも暑い。雨季と乾季があるものの、暑さと湿気は変わらず。米はよく育つだろうなと思う。雨季の時期は夕方、必ず土砂降りがあり、2時間もすれば嘘のようにまた晴れるのだが、雨上がりの道を、バイクで走るあの爽快感はたまらない。ビンタンビールという地ビールがあるのだが、蒸し暑いバリ島の気候にぴったりのライトテイストである。


 香港はどうだろう、地震は無いが、台風は頻繁に襲来する。夏場はオススメしない。あのアジア特有の香辛料の匂いと、様々な匂いが入り混ざり、得体の知れない空気を醸し出している。6、7年くらい前に奈津子先生と1週間、香港へレッスンを受けに行ったのだが、奈津子先生は匂いが駄目で、結局一歩も外へ出られなかった事がある。上海蟹が出始める11月以降が幸せな季節かもしれない。


 ロサンゼルスはいつも晴れていて、カラッとしていて、何もかもでっかくて、エネルギーをもらえる。移民の国。アメリカンドリーム。みんなチャンスを掴む為、一生懸命である。ゴールドラッシュの頃からずっとそうなのか、この気候と広大な大地がそうさせるのか、この国にはモチベーションをかき立てる何かがあると思う。


 世界ショーダンス選手権、2012、2014、2015年と3回ともロシアで行われ、私はそれぞれ6位、5位、3位だったが、ロシアはいつも曇っていて、いつも恐ろしく寒かった。あの寡黙で一見すると取っ付き辛い性格だが、一方で内に秘めた情熱も持ち合わせているロシア人の気質は、この気候と土地柄によるところが大きいと思う。文字は読めないし、物価は恐ろしく高いし、良いところを探す事の方が難しいのだが、一度仲良くなると友達を大切にするといった民族性は良い面としてあげられるのではないだろうか。


 その土地の気候や環境は、そこに住む人々の生活習慣を決定付け、長い時間をかけ、文化を形成していく。そんな事を、知識としてではなく実体験として理解する事が出来るのがワールドトラベラーとしての一番の醍醐味であろう。民族性や人種の違いを理解する為には、その人が住む地域の環境を十分に理解する必要がある。別に人類学に興味がある訳ではないのだが、新しい友人と良い関係を築くのには大いに役に立つ知恵である。


 まあ、最終的にいつも日本に帰国し、銭湯の湯に浸かりながら、やっぱり日本が一番としみじみ思うのだが。。。