先日、貴乃花親方が引退届を出し、角界から去った。確かに不器用なまでに一途で、時として誤解を招く様な言動も見受けられた。しかしながら、旧態然とした角界の改革半ばで、この様な形で去ってしまうのは非常に無念であろう。
一方フェンシング界では北京オリンピック銀メダリストの太田雄貴氏が昨年、31歳の若さで協会会長に就任し、ドラスティックな改革を行い、フェンシング業界はかつてないほどの盛り上がりを見せている。はたまた、ボクシング協会や、アマチュアレスリング、アメフトなどのマイナースポーツ業界で起こっている一連のハラスメント問題も、我々ダンス業界も対岸の火事などとは言っていられないだろう。
まず残念ながらと言っていいのか分からないが、世間一般から見ると、我々のダンス業界はマイナーな業界である事を認識しなければならない。テレビや新聞に日常的に結果が載るわけではないし、観客動員数も年々減少の一途を辿っている。各団体それぞれに工夫を凝らし、対策を練って試行錯誤しているものの、どうしても場当たり的な対応に終始してしまい 、効果的な解決策を見出せていないのが現状であろう。会場費を補填する為にプレミアムアマデモを導入し、賞金を拠出してくれるスポンサーを探しても、結局のところ選手の頭数がいなければコンペは成り立たないという事実に突き当たる。
私がプロデビューした2002年頃はノービス戦ですら50組を切ることが無かった。クラス戦ではC級戦やB級戦は200組前後はエントリーしていたし、スーパージャパンカップなど400組近く出ていた記憶がある。それが先日、北海道で行われたJBDF選手権のプロラテンの出場組数は130組である。B級戦なども100組を切るほどである。一番登録選手数の多いJBDFからしてそうなのだから、JDCやJCF、またはPDなどはもっと少ない人数で大会を行なっているという事になる。
我々の業界は選手にお客様が付いているので、必然的に選手がファンにチケットを売る事になる。出場組数が少なければ、当然観客動員数も減るのである。もちろん純粋にダンスの試合を観に来るファンもいるが、割合で言えば少数であろう。手取り早い解決策として、団体の統合ないしは競技会の統合がまず考えられる。というよりは既にそうでもしなければ、試合をやる度に赤字を出し、それを穴埋めする為にエントリー費やチケット代を値上げし、それに嫌気がさし、選手や観客が減っていくというデフレスパイラルに陥ってしまうのである。では団体や競技会の統合だけで問題が解決するかというと、結局5年後、10年後にはまた、まとまった団体が現在の各団体と同じような状況に陥る事は想像に難しくない。未来を見据えて、抜本的に改革していかなければ、本当にこの業界の未来は危ないのではないだろうか。
業界が一丸となって取り組んでいかなければならないことの筆頭として挙げられるのが、やはりジュニア、ジュブナイルの育成であろう。一貫して長い目を持って、子供達を育てていくシステムが、残念ながら我々の業界には無い。個人的にジュニアを育て、海外のコンペなどに連れて行ったりしている先生や、JDSFがジュニアの育成として、強化選手の合宿などもやっているが、プロ団体との連携がとれていない所為なのか、結局のところ行き詰まっている感が否めない。有志が個別にジュニアスクールを開講して、それぞれの経験に基づいてレッスンをしてはいるものの、体系化されたカリキュラムや、育成にかかる予算の確保が無いままでは、本当の意味でのクオリティを教え続けることは難しいだろう。
どうか団体の枠組みを超え、皆で力を合わせて子供等の育成に情熱と資金を注ぎ込んでもらいたいものだ。未来を担うのは子供達である。今取り組み始めても、成果が出るのはずっと後になってからだろう。それでも我々は種を蒔く事をやらなければ、日本のダンスのレベルは今より上がることはないだろう。子供が憧れるようなスターを作る。そのスターの姿を見て、ダンスに興味を持つ子供達が増えるような循環を作っていければ、細い可能性だろうが、未来に繋がるのではないだろうか。
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