一期一会 「上達の秘訣!?」

 大学のダンス部に入って、部室に入り浸っていた頃、私の一番の先生は擦り切れたビデオで見る、ポールキリックとビベッケトフトでした。2人のルンバを穴が空くほど見て、ポールの3回転をどうしてもやりたくて、夏合宿中に1日1000回転の目標を立てて回りまくっていました。ベーシックの大切さが分かって来たのは随分後の事で、まずは自分の好きなものに憧れ、それを必死に真似する事が私のダンスの原点だったのかもしれません。


 古来日本には物事を習い、習得していく過程に於いて、守・破・離という段階があります。守とは、師匠の教えを学び、それを忠実に実践していく段階。破とは、その教えを自分に合った形に応用して行き発展させる段階。離とは、破からさらに飛躍し、新たな形を創造していく段階の事を指します。我々のボールルームダンスに於いても、学んでいく過程で、同じような事が言えるのではないでしょうか。

 はじめは師匠の教えをしっかりと学び、考えや理論を身に付ける。踊りは自然と師匠に似るようになるでしょう。習ったテクニックをさらに自分に合うような形に応用して、踊りに自分らしさが出てくるのが、次の段階。いわゆる個性というものが見えて来ます。そして最終的には絶対無二のアイデンティティを踊りの中に確立させるようになれば、歴代のチャンピオンダンサーの様に、皆の記憶に残る象徴になり得るのかもしれません。


 先日、とあるイベントで某スタンダードチャンピオンの先生とご一緒させて頂いたのですが、その先生が「自分が現役の頃、あるコーチャーに何回も同じ事を注意されて、コーチャーの言う事を忠実にやっているのに、なかなか良くなったと言ってもらえなかった。ある日違う先生に言われ、練習を重ねた結果、自分にしっくりくるやり方をそのコーチャーに見せたところ、やっと俺の言っている事が理解出来たかと喜ばれた。結局は自分の踊りは自分で創意工夫して作り上げるしかないんだよね」と笑っておられた。

 日本人は真面目だし、素直な国民性を持ち合わせているから、どうしても教わった事を忠実になぞろうとしてしまう。もちろん初期の段階に於いては模倣が一番の上達方法である事は間違いないでしょう。しかしながらそこからの発展を自分自身で切り開いていかなければ、次のステージに進む事は叶わないでしょう。また逆に言えば、最初に守るべき「守」つまりベースとなる基準やベーシックがないと、スタイルや見せ方に終始し、中身が薄いものになってしまい、根本的な上達には繋がらないでしょう。


 成長には環境も非常に重要な要素になります。習うより慣れろじゃないけど、例えばジュニアの頃から毎日、ジョアンナ・ルーニスの横で練習出来る環境にいれば、きっと凄い刺激的でしょうね。習わなくたって、トップ選手の踊りの中で育っていけば、そのスピードやエネルギーに自然と慣れていくでしょう。才能や骨格、その人の持ち合わせているものは100人いれば100人違うからこそ、自分を知り、パートナーを知り、より良い環境を探し出し、自分達に合った成長の仕方を模索する努力が必要になって来ます。お金をかけなくったって上達するヒントは沢山転がっているはず。私達のダンスはペアで行うものだからこそ、時として上手くいかない原因を相手に求めてしまいます。しかしながら答えは自分の中にしかないんです。基本を学び、自分を知り、創意工夫を凝らしながら自己研鑽していく努力こそが、一番の上達の秘訣なのでは!?