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バルカーカップ 統一全日本戦を振り返って




真の日本一を決める大会と銘打って、2000年に始まった統一全日本戦も、気が付けば今年で20回を重ねるに至り、20周年記念イベントとして私もエキシビションを踊らせて頂いた。しかしながら20年経っても未だに統一という文字が取れていない意味を考えてみると、この20年間、団体間の政治的な争いの場になっていた事も、過去から現在に至るまでの審査結果を見れば、否めないのではないだろうか。よりフェアな競技会を求めるならば、団体間の壁を無くし、フラットに審査出来る環境作りが必要になると思う。この大会が日本の代表を決める試合なら尚更のことだろう。

とはいえ出場組数こそ、年々漸減しているものの、相変わらずチケットの入手は困難を極め、会場の熱気たるや、まさに日本一を決めるに相応しい大会になった。



予選の早い段階から選手達は、いつもにも増して、熱のこもったパフォーマンスを披露していたように思う。その中でも、最終予選(ベスト48)から準々決勝(ベスト24)にかけてのラウンドが一つのハイライトだった。最終予選である4次予選に残る選手達は、基本的にある一定のレベル以上のダンスを、誰もが展開しており、言い換えればミスの無いコンスタントな踊りをしていた。その先の準々決勝への壁は厚く、ここを超えられず、何年も苦労している選手も多いのだが、ここを超えてくる選手達は、コンスタントさにプラスして、各々必ず一つ以上の武器を持っている。言い換えれば、他の誰とも違う個性があったり、強みがあったりする選手が残っていると言える。オープニングパレード後に行われる、このクォーターファイナルに残る事が一つの国内のダンスシーンの中での、自分達の存在感の足場を築く為の分岐点だとすると、やはり選手として爪痕を残したいという気持ちは非常に理解できる。



更に準決勝、決勝へと駒を進める為には、本人達の努力やタレント性もさることながら、積み重ねて来た実績や経験、はたまた時代の流れや、上位選手の引退等のタイミングなど様々な要素が必要になってくる。今回のプロラテンの準決勝を見る限り、次世代を担う若手選手の躍動による世代交代という流れと、豊富な経験と、実績を備えたベテランの意地のぶつかり合いの様相を呈していたように思う。予選の段階では複数のヒートに分かれて踊っていたトップシードが、準決勝からは同じフロアでぶつかり合うことになる。そうするとよりエネルギーが強いカップル、より個性が際立つカップルが目に飛び込んでくるようになる。



ボールルームダンスのコンペは一度に複数の選手が踊る。つまり個々の単体で踊りを絶対評価するというよりも、相対的に見比べてジャッジする事になるのだが、予選のうちにどんなに良い踊りをしていても、準決勝で他選手に比べ、見劣っていると、決勝への道は険しくなってしまう。更に存在感が希薄になり、視界から消えてしまっては、もう審査の対象にすらなれない。準決勝で大切な事は、12組踊っている中で、いかに自分達のスペースやエネルギーを保持しながら、最後まで存在感を出し続けるかという事になってくる。もし決勝メンバーを見て、意外と感じられた方がいたら、そういった観点も準決勝を勝ち抜くには重要だと考えてみるといいと思う。




第3予選から踊り始めても、決勝まで5ラウンド。最後のファイナルはいつ終わるかも分からない、長い生演奏。そのようなタフな試合を最後までエネルギーと集中力を切らす事無く踊り切ったものだけが、至上の喜びと共に栄冠を手にする。ファイナル7組中、初ファイナル3組というフレッシュな顔触れとなった決勝は、皆気持ちのこもった良いダンスを披露していたように思う。準決勝と同じく、やはりエネルギーの継続は良い順位を得る為の重要なファクターであることに代わりは無いのだが、ここでは更にカップルとしてのハーモニーや、テクニック、パートナリングなど、質の高さも要求される。5種目を通して、最後までチャンピオンに相応しい振る舞いをし続ける必要を強いられるのだ。そのような激戦を勝ち抜いて、新しいチャンピオンとして、歴史に名を刻んだ増田組に改めて賛辞を贈ると共に、ファイナリストの面々は、日本を背負う立場として、インターナショナルステージに於いての更なる飛躍を期待したいと切に願う。

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