「Shall We Dance 」

「やばいよね、、」「ガラガラじゃん、」そんな声が聞こえる試合が沢山ある。それはそうだろう。いくつもの団体に分かれ、それぞれの団体が統制なく試合を重ねて開催するのだから、お客さんはおろか、選手だって全ての試合に参加する事は、非常に難しいだろう。更にパーティーやイベントも目白押しで、カレンダーの週末欄は二重三重と予定が重なる事が常である。



そんな状況でも、皆、工夫を凝らし、なんとか盛り上げようと頑張っているが、ひと昔前とは違い、世の中には様々なエンターテイメントが溢れており、一万円も出せば、十分に質の高い感動を味わうことができる。わざわざダンスの試合やイベントに高いお金を払って観に来てくれるのはマニアなファンか、出場している選手の生徒さんぐらいであろう。アマプロ問わず、競技人口が減少傾向にある昨今に於いて、主な客層が出場選手の生徒さんという構図に変化が起きなければ、少子高齢化の時代背景と相まって、ダンス界が立ち枯れていくのは必然なのかもしれない。




11月末、私は中国の朱海(ジュハイ)市で行われたコンペに審査員として招かれた。驚くなかれ、試合規模は4日間で、13000エントリー、7000人の出場者を数えた。大きなアリーナを4面のフロアに分け、様々なカテゴリーの試合を同時に進行していく。50人を超えるジャッジも朝から晩まで休むことなく、自らの仕事に追われる。週末をジュニアやジュブナイルの試合に当て、メインのプロやアマのオープン戦を平日に持ってくるあたりも面白い。巨大なLEDスクリーンに無数の照明。日本のトップアーティストのライブにも引けを取らないような、演出設備を準備出来るのは、膨大なエントリー費のおかげだと言う。

チケットの売り上げはどうかと尋ねると、フロアサイドのテーブル席だけわずかに販売しており、上方のアリーナは選手とその家族に開放しているという。子供達は主に中国各地のダンス学校の生徒であり、パートナーとペアで踊る子も、ソロダンスやシンクロダンスなど、複数のカテゴリーにもエントリーする。




先日、ゲストとして招かれたフロリダの試合でも、4日間で、1000を超えるヒート数を数え、プログラムはもはや広辞苑並みの分厚さがあった。こちらの試合はプロアマミックスのエントリーが非常に多く、またその種類も多岐に渡っており、1人の生徒が何エントリーも出来るようになっている。全てのカテゴリーに於いて、賞状とクーポンが付いており、そのクーポンは受付で小切手に換金出来るシステムを取っている。会場となるホテルと上手く提携しており、レストランや、練習フロアなど、全て専用のものが用意されている。



二つの試合に共通して言える事は、どちらも試合に参加する人達のエントリー費が、運営の予算をカバーしているということだろう。沢山踊れる喜びなのか、トロフィーをコレクションする楽しみなのか、とにかく皆、踊りたくて仕方がないのが見て取れる。


長年、社交ダンス界を支えてきたのはダンス愛好家と言われる人達である。フィギュアスケートなどとは違い、観る専のファンで観客席が埋まることは、中々難しいだろう。フィギュア界の変遷の過程を見て取ると、やはりオリンピックなどでメダルを取れる選手を輩出し、そのスターに続く選手達が継続して活躍して来たからこそ、今日があるという。ダンス界でも、もちろんそのような取り組みを続けていかなければならない。しかし、何年後かにもしかしたら、ダンススポーツがオリンピックの種目になり、もしかしたらメダルが狙える選手が出てくるとして、果たしてその「もしかしたら」を待っている時間が、この業界に残されているだろうか、、



近年これだけメディアに取り上げられているフィギュアスケートでさえ、一部のジュニア育成機関を除き、愛好家は増えていないという。日本には10万人、はたまた30万人とも言われるダンス愛好家がいる。広く世界を見渡しても、これだけのダンス愛好家を抱えている国はない。愛好家の中には競技ダンスの試合を観たことがない人も沢山いるだろう。


皆、ただ踊る事が好きなんだと思う。そういった人達に参加してもらえる形の試合を考えてみてはどうだろう。観る専も結構。そこを入り口にダンスの魅力にはまる人もいるだろう。ただ、既にダンスを踊る楽しさを知っている人達を見逃す手はないだろう。誰でも気軽に参加出来、競う喜びも味わえるコンペ。学連OBOG戦など、いい例かもしれない。観光立国日本ではないが、インバウンドを狙って、中国や台湾から沢山の選手やその家族に参加してもらえるような大会を企画しても面白いと思う。そういった内在的な需要を上手く掘り起こしていけば、ダンス界の明るい未来は大いにあると思う。




人は太古の昔から音楽と舞踊、そして信仰と言えるものを生活の一部として内包してきた。原始的欲求としての踊りの在り方は歴史が証明している通りである。映画「Shall We Dance 」が大ヒットしたのも、80歳を超えた生徒さんが毎週教室に足繁く通ってくるのも、そこに自らが踊りたいという普遍的な想いがあるからだと思う。コミュニケーションが多様化し、人と人との繋がり方が複雑になって来ている現代だからこそ、身体一つあれば踊れるダンスに可能性を感じずにはいられない。「Shall We Dance」「Dance With Me」身近なタイトルの中に答えは既に出ているのかもしれない。

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一期一会 2020年8月 「フューチャーズカップ」 一向に収まる気配を見せないどころか、第2波ではないかと目されるこのコロナ禍の状況。秋以降の試合やパーティーも続々とキャンセルの悲報が相継ぎ、停滞したままのダンス業界にも、廃業や撤退の影が忍び寄って来ている。私達はこのまま座して死を待つ他ないのだろうか。 私はターンプロした2002年から毎年学連の子達を教えて来た。1年も絶やす事なく毎年冬全へ送り出