「想いの行方」

一期一会 2021年2月 ダンスビュウ掲載


「想いの行方」

人は他者との関わり合いを持って初めて人間になり、社会性を獲得する。言い換えれば全世界に一人だけ存在し、他者を知覚しなければ、社会性は必要なく孤独も共感も生まれ無い。オーストリア出身の心理学者アルフレッド・アドラーの言葉だが、まさに言い得て妙である。さらにアドラーは綴る、全ての悩みは人間関係から来ており、自身と他者との課題を明確にし、他人の人生を生きるのではなく自分の人生を生きるべきだと。


他人に振り回されることなく、自分の人生を思うがままに生きられたらどんなに幸せなことだろうか。誰もが少なからずそんなことを考えたことがあるのではないだろうか。残念ながら複雑に絡まり合ったこの社会ではそんなことは不可能だろう。しかしアドラーは、考え方を変えるだけで、どんな人でも幸福に生きる事ができるという。

昨年末に起こった、JDCのWDO加盟に伴う突然のNDCJ脱退劇。未だ収束どころか、先行きの見えない状況に右往左往している選手や関係者も多いと思われる。そもそもの原因を辿れば、WDC会長のドニー・バーンズ派とアンチドニーのアルナス・ビゾーカス派による政治闘争の果て、アルナスを会長とするWDOという組織がWDCから独立したことなので、日本国内での揉め事では無いのだが、それぞれ正義だと思う組織にフォローしていった結果、20年続いた3団体統一全日本戦の開催が危ぶまれるといった事態に発展している。過去に分裂の歴史を経験している日本の関係者たちにとっては毎度お馴染みの事なのかも知れないが、トップを目指して日々努力をしている選手やハイレベルなコンペを楽しみにしているファンにとってはショックと失望は計り知れないだろう。


もちろんこのままで良いはずは無く、各組織の偉い方達は、どうやったら選手やファンが望むような形の試合が実現出来るか、日夜考えているはずである。いや、考えていなければ組織のトップとして相当危機管理能力に欠けると言っていいだろう。組織の分裂はどんな理由があろうと結果、組織の縮小であり、業界全体の利益を考えた時、その手段は下の下である。第三者から見た時にこの業界の状況はその目にどう映るのか、理解していない訳は無いだろう。自分たちの組織の事だけを考えて、業界全体の繁栄をおざなりにすることは、回り回って自分達のマーケットを縮小させる遠因になることくらい分かっているはず。。。


なので、皆さんは色々悩んだり、右往左往するのはやめよう。大丈夫、きっとうまくやってくれるはず。アドラーの言葉を借りれば、あなたが解決出来ない問題に、いちいち悩むのは時間の無駄であり、それはあなたの課題では無い。あなたにとっては自分で解決出来る悩みに向き合うことの方が大切であり、有意義である。

人生には往々にして、自分の努力ではどうにもならない事態に直面する場面がある。そんな時は無駄な足掻きをせず、じっとしておくことが得策の場合も多い。頭を下げて嵐が過ぎ去るのを待つ。自分に出来ることと、他者の領分とをきちんと分けて考え、自分に出来ることにベストを尽くせば良い。



この業界を愛し、良くして行きたいという想いを大なり小なり、皆が持っていると思う。その想いを信じ、今は大変な時期かも知れないが、嵐が去り、雲の切れ間から太陽が覗いた時に羽ばたける準備を、今自分にできる事を日々積み重ねておけば良いのではないだろうか。

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