「スラビック&カリーナ」


2004年だったと思う。夏の風物詩、ワールドスーパースターズのゲストとして来日していた、スラビックとカリーナのレッスンを受けたのが、初めての外国人のレッスンだった。当時は彼らも私達もまだ若く、熱く、時にヒートアップし過ぎたレッスンが、今は懐かしく思う。当時、世界のダンスシーンではブライアン達の次のチャンピオンはスラビック&カリーナだと目されており、UK戦では優勝、ブラックプールでもブライアンに次いで二位の位置まで来ていた。私達は彼らの踊風に惚れ、ステップもそっくり真似をしていた。時としてスラビックの完璧主義者特有の繊細さが、カップル間でしか分かり得ないような微妙な差異を許せず、よくカリーナとの間で喧嘩になっていたように思う。カリーナが私達のレッスンをしていても、ステップの流れや身体の使い方が気に入らないと、口を挟んできて、それでレッスンはそっちのけで喧嘩が始まったりしたものだ。


その後、非常に残念なニュースとして、彼らの解消の衝撃が世界中を駆け巡った。スラビックはその後、ハンナやエレナ、アンナ・メルニコヴァなど、名だたるパートナーと組んだが、やはりカリーナとのカップルが放つ輝きを超えることは無かったように思う。カリーナはというと、ディミトリー・ティモキンと一時はカップルを組んだものの、やはり長続きはせず、アメリカに渡り、'Dancing With Stars' に出演。そのチャーミングなルックスと、卓越したダンススキルでアメリカの人気スターの道を歩いていくことになる。




エスパンの元にスラビックから一本の電話がかかってきたのが、2人が解消してから10年後のことである。送られてきた2人がトライアウトしている動画を見て、驚いたのは言うまでもない。2人で再び踊る決意をし、エスパンが振り付けに携わり、カムバックの舞台になったのが、2015年12月の日本で行われた'Dance A La Mode' だった。往年の2人のダンスを知る私達は、あのルンバやショーダンスのイントロを聞いただけで鳥肌が立った。その後、世界各地で、それこそ本当に世界中で、デモンストレーションに呼ばれ、その素晴らしいショーを披露してきた。引退して10年以上が経つのに、これほどまでに人気があるカップルが他にいるだろうか。今更ながら、彼らのカリスマに驚かされるばかりである。しかしながら誰にでも最後の時はやってくる。年齢的なことを考え、2018年のワールドスーパースターズを日本での最後のデモンストレーションにすると発表した。その年のロンドンボールでイギリス最後のデモンストレーション。そして、先日4月8日に香港でのラストデモンストレーションを披露した。香港のセレブリティ達、世界のトップダンサー達の見守る中での、5曲は今まで観てきたどんなデモンストレーションよりも胸に来るものがあった。あの場に立ち会えたことを本当に嬉しく思う。今後はアメリカでのショーが残されていると伺った。



コーチャーとしても、沢山の弟子を抱えるスラビックとカリーナだが、ダンスに対する真摯な姿勢は変わらない。私の好きなエピソードの一つに、スラビックはエスパンがショーを観に来ている時には必ず、ショーが終わった後に、エスパンのところに飛んできて、こう聞くそうだ「僕の今日のルンバウォークはどうだった?」ストイックなまでに自分を鍛え、節制し、良くあり続けようとする姿勢は、まさにお手本にすべきだろう。昨年、ロシアのキャンプに参加した時も、朝からアーマンや、キリルなど現役トップ選手を教えた後に、おもむろに着替え始めて、バレエのバーレッスンを始めた。やがて中年のおじさんがやってきて、彼が僕のバレエの先生なんだと紹介してくれた。バーレッスンから始まり、体幹トレーニング、最後はウォークまでその先生にチェックしてもらいながら汗を流している姿に、1人異国の地で、奮闘していた私は勇気を貰えた。




彼らの踊りがもう見れないと思うと非常に残念だが、これからも素晴らしいコーチャーとして、後進の育成に力を入れていくだろうと思われる。スラビック、カリーナ、沢山の素敵なショーとインスピレーションをどうもありがとう。